2012年のキラウエア火山

2012年のキラウエア火山

2012年に発信したキラウエア火山情報をまとめた記事です。

カラパナ地区(ロイヤルガーデン)に残されていた最後の1軒、ジャックさんの家がついに溶岩流に飲み込まれてしまった年。1983年から何度も危機を乗り越えてきた家です。ロイヤルガーデン 最後の1軒が消えるまでの実録としてまとめました。

2012年、世の中では何が起こっていた?

  • 東京スカイツリー開業
  • ロンドン五輪
  • 自民党圧勝、首相に安倍晋三氏が復帰

01月04日 オーシャンエントリー消滅

お正月を迎えると同時にオーシャンエントリー(海に流れ込む溶岩)がまた姿を消しました。今回は3週間弱という短い命のオーシャンエントリーでした。Pele(火山の女神)の気まぐれは有名ですが、何とかならないものでしょうか。久しぶりのオーシャンエントリーでしたので、溶岩を間近で見たくてウズウズしていたお客様が沢山いらっしゃいました。溶岩ボートツアーのご予約を多くいただいていたのに、また残念なニュースの報告となってしまいました。

でもまだ火口付近では溶岩活動は続いています。上空からは溶岩はまだ見えています。閉じてしまったチューブがまた開いてすぐにオーシャンエントリーが戻ってくる可能性もありますので、Peleさんの機嫌(調子)が良くなることを望みましょう。

03月03日 溶岩が迫る!ロイヤルガーデン最後の1軒が危ない

年が明けて溶岩チューブが冷え固まり閉じてしまって以来、オーシャンエントリー(海に流れ込む溶岩)が2ヵ月以上もありません。海に流れ込めなくなった溶岩は火口と海岸線の中間点付近から地面を流れ(サーフェースフロー)、高度の低い海に向かって少しずつ進んでいます。サーフェースフローは東に進んだり南に向かったりと方向が定まらずにいましたが、数日前から南東に向かって進み始めてしまいました。その溶岩流の進路に一軒の家があります。ロイヤルガーデンに残された最後の家、友達のジャックさんの家です。

2010年当時のジャックさんの家
2010年当時のジャックさんの家

プウオオ火口が1983年に噴火して以来、ロイヤルガーデンやカラパナの町にあった200軒近くの家が溶岩の餌食となってきました。溶岩が一軒、また一軒と飲み込んできた中、ジャックさんの家は何度もの危機を乗り越えてきました。偶然とは思えないくらいです。火の女神ペレさんがジャックさんのことを愛しているんじゃないかと思うくらいでした。

しかし、ついにその時が来た予感がします。昨日の最後のフライトで、溶岩の先端は彼の家から100mくらいの所まで達していました。彼の家の周りに残された林が燃え始め、小さな山火事が発生し始め、ジワジワと溶岩はジャックさんの家を目指して一直線に斜面を下っています。サーフェースフローが昨日の進路とスピードで流れ出ていたら、もしかしたら昨夜中には火に包まれていた可能性も大きいです。今日は私はオフでフライトがない為、他のパイロットからの連絡を待っているところです。

溶岩台地のなかにポツンと取り残されていたランドマーク“ジャックさんの家”。プウオオの噴火が始まる前、つい最近まで「ここには住宅があり人が住んでいた」という事が本当に伝わってくる場所でした。人間は無力、自然を相手にしたら何もする術がないということを、多くの人がこの家を見て痛感してきました。溶岩流の方向が変わるか、サーフェースフローが止まってくれることを昨日から祈り続けています。

→ジャックさんの家に迫る溶岩の状況を伝えるブログ記事 (3月3日) (外部リンク)
万事休す!?切迫した状況が写真から伝わってきます。

03月05日 ロイヤルガーデン最後の1軒、ついにその灯を消す

ついにその時が来ました。ロイヤルガーデンに残されていた一軒、ジャックさんの家が溶岩流(サーフェースフロー)に飲み込まれてしまいました。1983年から何度もの危機を乗り越えてきましたが、“自然 vs 人間” に勝敗がつきました。上空から溶岩流の間に残されたジャックさんの赤い屋根の家をご覧いただくことで、お客様には「本当にここに最近まで人が住んでいたんだ」ということが言葉や説明なしで分かってもらえる場所でした。そのランドマークが無くなってしまったのは非常に悲しいことです。これからは、家の痕跡をお見せすることで「自然の凄さと怖さ」をお伝えできればと思います。

ハワイ島でフライトを始めた1989年からジャックさんの家をずっと見てきました。家にも何度もお邪魔しました。「いつかその時は来る」と分かっていても、実際その時が来てしまうと辛いですよね。ひとつの幕が下りて、新しい歴史が誕生したんですね。

03月08日 【実録】ロイヤルガーデン 最後の1軒が消えるまで

ジャックさんの家が無くなってしまってから数日間、天気が悪くてフライトはキャンセル続きでした。焼け跡を見られるのが嫌で、心の整理ができるまでは雨を降らしていたのかもしれませんね。

今日やっとフライトができ、自分の目で確かめて来ました。あの赤い屋根のジャックさんの家は、溶岩流に飲み込まれ悲しい姿で残されていました。ジャックさんの家のない新しい溶岩台地の新しい景色。最初のフライトでその光景を見た時には言葉に詰まってしまいました。とても複雑な気持ちになりました。でもそのことを日本のお客様にもしっかりと伝えたいと思い、写真と外部リンクでBefore&Afterの様子をまとめてみます。

溶岩が流れる前の状況

1983年以来の溶岩の爪痕
1983年以来の溶岩の爪痕

プウオオ火口が噴火した1983年以来の爪痕の様子です。以前のこの場所は全て緑の林だったのですが、徐々に黒い溶岩に飲み込まれて来ました。黒い溶岩流の合間に残っている緑の島(Kipukaと呼ばれます)は、たまたま溶岩が避けていった場所で、最初からあった林です。道路やジャックさんの家が残っている様子から、つい最近までここで人が生活していたことが分かります。

溶岩が家に向かって流れてきた

2月24日

エカハ付近から流れ出す新しい溶岩
エカハ付近から流れる新しい溶岩

最初に流れ出てきた溶岩はHoku Streetの右(東脇)を通過してくれたので、「今回もなんとか助かった」とホッとしていたのも束の間。その直後’Ekaha付近から新しいサーフェース・フロー(地表を流れる溶岩流)が始まりました。ジャックさんの家の真上1.5km位の場所から一直線に溶岩流は流れ始めました。「これはヤバイかな」と正直思いましたが、今までに幾度も危機一髪で難を逃れて来たジャックさんの家です。今回も心の中で「家の手前で溶岩が止まってくれる」、「今までみたいに溶岩流がそれてくれる」と信じていました。

最後の瞬間

ジャックさんの家は暗い夜に姿を消していきました。家が燃えてしまうその瞬間は、誰も見ることが出来ていないと聞いております。しかし数時間前~最後の瞬間の数分前までの様子がこちらのリンクでドキュメントされています。この時点でジャックさんはもう覚悟していたと思います。
→最後の瞬間のドキュメント(外部リンク)

ついに家が溶岩に飲み込まれる

溶岩流に飲み込まれたジャックさんの家
溶岩流に飲み込まれたジャックさんの家

3月3日

溶岩流に飲み込まれたジャックさんの家。冷え固まったばかりの真っ黒い溶岩の中に残されていたのは、熱で焼けて白く変色したトタン屋根と貯水のためのタンクのみ。プルメリア・ストリートの下には、行く筋もの赤い溶岩流が見えます。残された貯水タンクの右上には、林が燃え山火事によって煙が上がっている様子も捉えられています。

家の前まで伸びていた彼のドライブウェー「プルメリア・ストリート」も半分以上は溶岩の下敷きになってしまっています。プルメリア・ストリートの1本下を走るパラダイス・ストリートは、もうほとんど全てが新しい溶岩に覆われてしまいました。今はまだこのように跡形が見えますが、近い未来、これらも新しい溶岩に飲み込まれて姿を消していきます…。ひとつの歴史が終わったと本当に感じる瞬間です。

07月06日 キラウエア火山の活動は停滞気味

ハワイ火山観測所 (Hawaii Volcano Observatory)のサイトでマメに火山の様子をチェックしている方でしたら分かるかもしれませんが、キラウェア山ではここ数ヶ月これといった変化が見られていません。

夏休み前にオーシャンエントリーが誕生してくれれば良いのにと願っていましたが、残念ながら足踏み状態です。溶岩が地表を流れ海岸に向かい始めたかと思ったら失速して冷え固まり、また良い溶岩が流れ出たかと思ったら勢いを失ったりで、一向にオーシャンエントリーは復活していません。決して大きな溶岩流(サーフェース・フロー)ではありませんが、上空からは小さいながらもかなりの確率で地面を這う赤い溶岩が見えています。

現在一番良い溶岩が見えているのはプウオオ火口内です。雲が低く、プウオオ火口まで辿り着けないことも多々あるので、火口上空を飛べない時は見えないのですが、ボコボコと煮える溶岩が飛び散ったりする様子が見えております。これは見ごたえがありますよ。また、赤い溶岩活動ではありませんが、国立公園内のハレマウマウ火口から上がる白煙も見ごたえがあります。暗くなってから訪れると、白煙の根元が赤く染まるのも見えます。

もしかしたら次の大きな噴火のための準備をしているのかもしれないキラウェア火山。この後何が起こるか誰も予測は出来ません。溶岩が見える見えない関係なしに、キラウェア火山では今でも生きている火山、生きている地球を見て体験することが出来ます。

11月30日 オーシャンエントリー復活も、3日で消失

2012年1月1日に海に流れ落ちる溶岩流が止まり、オーシャンエントリーが無くなってからすでに11ヶ月が経ちました。ここ3ヶ月ほどは海岸線から1~2kmの内陸部付近で新しい溶岩流があっちに向かったり、こっちに向かったりと進路を変えながら少しずつ海に向かって進んでいました。プウオオ火口から溶岩チューブに送り出される溶岩の量が減ったりするとせっかく海岸線まで近づいて来た地上を這う溶岩は失速して冷え固まり、海岸線から遠い場所からまた溶岩流が流れ始め出てはまた失速して冷え固まるの繰り返しでした。

先週はペレ(気性の荒い火山の女神)の機嫌が良かったからなのか、溶岩流がどんどん進み海岸線までかなり近づきました。海岸線からあと20mぐらいのところでまた失速し始めたので、今回も冷え固まるかと思っていたら、11月24日(土)の1:00PM頃に11ヶ月ぶりのオーシャンエントリーが誕生しました。これはハワイのニュースでも報道されました。しかし今回のオーシャンエントリーの命は短く、11月26日(月)の夕方には完全に冷え固まり水蒸気も上がらない状態でした。

相変わらずPuuOo火口内での溶岩活動は結構活発で、ブクブクしたり溶岩の赤い塊が飛び散ったりする様子が見えたりしています。ハレマウマウ火口も白煙を上げており、暗くなるとその煙が赤く染まる様子が見えています。
皆さんが期待しているオーシャンエントリーいつになったら元気な姿で戻ってきてくれるんでしょうね。

12月08日 オーシャンエントリー再び復活、今度は持続する兆し

11月末に久しぶりにオーシャンエントリーが復活したけれど、3日間の短い命でした。

オーシャンエントリーは数日間一旦停止していましたが、12月1日にまた溶岩が海に流れ込み始めました。今回はペレが本気モードかもしれません。11月末のオーシャンエントリーの2倍近くの溶岩が海に流れ込んでいるので、現状が続けば今回の溶岩流で形成されたラバチューブがかなり安定する可能性があります。

このままオーシャンエントリーが続き、年末年始にハワイ島を訪れてくださるお客様を楽しませてくれることを願いましょう。でも、火の女神ペレはかなり気まぐれという事だけはお忘れなく。

12月29日 オーシャンエントリー消滅するも再復活、ペレの気まぐれが続く

12月8日の火山情報で伝えた「本気モード」に、やはり今回も騙されました。12月17日には完全にオーシャンエントリーが止まりました。しかし昨日(12月27日)の朝に少量の溶岩が海岸線まで到達し、崖のてっぺんから滝のように流れ込み始め、オーシャンエントリーを上空から確認できました。

このレポートを読んでいただけると、最近のオーシャンエントリーはいつ消えて、また次にいつ復活するのか本当に予測が立たない状況だということが分かっていただけるかと思います。今年はジャックさんの家がついに飲み込まれてしまったという残念なことがありましたが、それ以外はこれといった変化もなく火山活動は比較的おとなしかったですね。

次回の火山情報では何かすごい変化があった様子などをアップしたいので、ペレさん、2013年は凄い火山活動を見せてください!

タイトルとURLをコピーしました