2018年のキラウエア火山

2018年のキラウエア火山

2018年に発信したキラウエア火山情報をまとめた記事です。

激動の1年。レイラニ地区での大規模な亀裂噴火、国立公園内でのキラウエア・カルデラの大陥没をはじめ、群発地震による亀裂や陥没が広い範囲に発生しました。名所であったジャガーミュージアムが被害を受け、無期限の閉鎖となったのもこの年です。

日本のメディアでも連日大きく報道されました。しかし、その内容は火山の恐ろしさのみに焦点が絞られ、私たちが伝えたかった内容とはかけ離れたものでした。現地から正確な情報を発信することの意義や重要性を痛感した1年でもありました。

2018年、世の中では何が起こっていた?

  • 平昌五輪 羽生結弦が連覇
  • 西日本豪雨
  • 日産 ゴーン会長逮捕

04月07日 プウオオ火口と周辺で活発な溶岩活動

2017年11月に海へ流れ込む溶岩(オーシャンエントリー)が姿を消してから、早くも半年。それ以降、海岸線沿いの平地や崖の周辺では、地表に流れる溶岩が徒歩圏内で見えておりました。しかし、溶岩が火口から約1kmのところで漏れ出し始めたため、標高が低い海岸線の平地まで溶岩が供給されなくなり、溶岩活動はほぼ完全にストップ状態になってしまっています。地上のツアーからは簡単に溶岩が見えなくなってしまいました。

しかし、上空からはプウオオ火口内とその周辺で活発な溶岩活動がよく見えております。しかも3月中旬からは、プウオオ火口の山頂部で膨張が始まりました。近いうちに膨張に耐えられなくなった地表が破れ、大量の溶岩が流れ出てくる可能性がでてきました。

下の過去5年間の表でも分かるように、2014年と2016年の5月前後にも激しい膨張があり、キラウエアはその後に必ず大量の溶岩を見せてくれています。偶然だとは思いますが、見事に2年周期で起きています。さてこの先、いつどこで何が起きるのでしょうか!?

2つの火口の膨張・収縮を示す表

過去5年間のチャート

2013年4月~2018年4月

プウオオ火口の膨張を示す過去5年間のチャート(2013年4月~2018年4月)

月間チャート

2018年3月~4月
キラウエア火口が安定しているのに比べ、プウオオ火口が膨張を続けていることが分かります。

2つの火口の膨張・収縮を示す月間チャート(2018年3月~4月)

週間チャート

2018年3月28日~4月4日

2つの火口の膨張・収縮を示す週間チャート(2018年3月28日~4月4日)

05月02日 プウオオ火口内の崩落と陥没

プウオオ火口の膨張は4月後半から更に勢いを増していましたが、ついに膨張の限界に達し、4月30日の午後2:00頃に崩落・陥没しました。悪天候が続き、4月30日と5月1日はプウオオ火口に近づくことが出来ませんでしたが、今日、崩落後のプウオオ火口を上空から見ることができました。

プウオオ火口から15km離れたハレマウマウ上空から、見たこともないような色をした煙が目に入りました。

15km手前から見えてきたハレマウマウ火口から上がる煙

普段火口から立ち上がるのは水蒸気とガスが含まれた「白い」煙。しかし今日の煙は気味の悪い褐色、砕屑物が混じった煙です。

砕屑物が混じった褐色の煙が上がる

崩落前の火口周辺は、ここ数年の間に流れ出た溶岩で真っ黒い溶岩大地でしたが、崩落後は、火口の風下側は見事に褐色に染まりました。

火口の風下が褐色に染まる

大量に吹き出てくる大量の煙が酷く、どのくらいの深さまで陥没したのかは確認出来ませんでした。目測で150m位陥没したのではないかと思われます。

火口が150mぐらい陥没したか

プウオオ火口に設置されているウェブカメラのレンズには崩壊時に飛び散った砕屑物が付着しています。

崩壊時に飛び散った砕屑物が付着するウェブカメラ

これから予想されること

膨張と収縮のチャート

まずご覧いただきたいのが、下記の膨張と収縮のチャートです。これは火口外輪の2ヶ所に設置されたGPS間の距離を使って表されています。3月に膨張が始まり4月中旬から激しくなったことが分かります。この膨張が起こる一つの理由が、火口の深いところにあるマグマ(溶岩)が地上に簡単に噴出されず地表を押し上げるためです。

火口外輪二カ所に設置されたGPS間の距離を使って表された膨張と収縮のチャート

傾斜計測器のチャート

以下のチャートの緑の線は、プウオオ火口に設置されている傾斜計測器の結果です。4月30日14:00ごろ崩落があったことが明らかにわかります。

プウオオ火口に設置されている傾斜計測器の結果

溶岩の行方と東断層での群発地震

実は2011年にも全く同じようなことが起きました。2011月3月11日のカモアモア噴火です。

プウオオ火口奥深くの地下にたまり続けた溶岩が崩落と一緒に押し出されました。溶岩が噴き出して来たのが火口の西約1kmの断層亀裂上。幅数百メートル、高さ100m近くの赤いカーテン状の溶岩噴火が5日ほど続きました。(東日本大震災と同じ日だったため、地震が噴火の引き金となったと日本では報道されていたようですが、私の個人の意見では無関係だと思っています)

しかし、2011年と今回の崩落には大きな違いがあります。2日経った今、どこからも溶岩が溢れ出てきておりません。火口奥深くに溜まっていた大量溶岩がどこかに移動した可能性があるということです。

ここで気になるのが崩落後の地震が発生している位置です。キラウエア東断層上のプウオオ火口より更に10km以上東(東断層の先端付近)で地震が多発しています。マグニチュード2以下の小規模の群発地震ですが、浅めの場所で起きていることと、地震の回数が気にかかります。

以下の地図から、1か月以内に起こった722回の地震の場所がわかります。崩落前の2日前までは殆どの地震はキラウエア山頂のハレマウマウ火口付近で起きていましたが、崩落後はプウオオ火口より東の断層上集中しております。

地震があった場所

赤:過去2時間 オレンジ:過去2日 黄:過去2週間 白:過去2~4週間

地震のあった場所を示すマップ

東断層で新たな噴火の可能性

キラウエア山頂のハレマウマウ火口の地下にあるホットスポットから出ようとする溶岩は溶岩溜から断層に流れ込んでいます。1983年からキラウエア火山の東断層亀裂噴火としてプウオオ火口が噴火活動を続いていますが、プウオオより東で起きた最後の噴火は1977年です。

1977年以来、プウオオ火口から東の断層に供給されていなかった溶岩が、今回の崩落により、プウオオ火口から10キロほど東の断層に流れ込み始めた可能性があり、もしかすると、次の亀裂噴火が起こるかもしれないという可能性が出てきたわけです。

問題は、その断層10kmの区間上にパホア、レイラニ、ナアワレ、ハワイアン・ビーチーズといった小さな町が存在していること、そしていつ何処で新しい噴火が始まるかわからないということです。勿論、これまで通り、プウオオ火口で噴火が続く可能もあります。

東断層に溶岩が供給され始めたか?(溶岩の図解)

火山と共存する暮らし

噴火は自然現象の一つ。ハワイ島に住むということは、火山と共に生活をすること。噴火などによる災害は絶対に避けられません。ただし、ハワイの火山の噴火は日本の火山で起きる爆発的噴火とは違います。危険度ゼロということではありませんが、それほど心配する必要は無いと思います。

この様な火山活動がハワイで起こると、日本のメディアなどは「火山活動が活発になった」としか説明しないため、ハワイの火山をご存知ない一般の方々は「今ハワイ島に行くのは危険」と勘違いしてしまいます。今後どこで噴火するかにもよりますし、火山周辺の住民は不安な生活を強いられる可能性はありますが、旅行者には安全面の影響はないと言っても良いと思います。ハワイ島旅行をキャンセルや自粛するのではなく、何が起こるのか目の離せない世界遺産「キラウエア火山」を、ここハワイ島で感じていただきたいものです。

05月06日 レイラニ地区で亀裂噴火が始まる

噴火に際してお伝えしたいこと

キラウエア火山の特性

最新火山情報の前にお伝えしたいことがあります。ハワイの火山と日本の火山の違いについてです。ハワイの火山は日本で見られる爆発的な火山ではなく、比較的安定した火山です。

今回の噴火で溶岩が噴出した周辺の住民には避難勧告が出され、住民以外の一般人(観光客)の出入りは禁止となりました。多くの観光客が訪れるハワイ火山国立公園も地震が続き、呼吸器系に影響を及ぼす有害なガスが検出されているため、現在は閉鎖されています(閉鎖は数日で解除される可能性もあります)。ハワイ島での火山の噴火を恐ろしい、怖いものだと思う必要はないと思います。山が育ち、島が形成され、地球が変化を続けることは生きている証明であり、自然現象の1つにしか過ぎません。

噴火を受け入れる生活

今回の火山活動で人間への被害が最小限で済んで欲しいと思うのは、人として当然のことです。ただ、ハワイ島に居住するという決意をした時点で、火山と共生、共存を受け入れたということ。東断層上付近の物件を選択した、イコール、火山活動によって所有物を失う可能性があるということを受け入れたということです。

火の女神ペレが、私たち人類に「ここに住みなさい」と命令したわけではありません。私たち人類がそこに住むことを選択しているわけです。今回家を失った方たちの中には、短い間だったかもしれないけれど、ペレが創造中の土地に住まわせてもらえたことに感謝している方もいると思います。

キラウェア火山が噴火したから、地震が起きたからと、ハワイ島を恐れる必要は無いと思います。キラウェアから離れた場所に住んでいる人々には全く影響がなく、普通の生活をしています。旅行者もキラウェア周辺を訪れない限りは、何も問題なく今まで同様のハワイ島滞在をエンジョイできます。

レイラニでキラウエアの新時代が始まる?

4月30日の崩壊で火口内がどのくらいの深さまで陥没しているのかは、上空からまだ確認できません。最初は150m位かと思っていましたが、その数倍の500~600mもしくはそれ以上陥没した可能性があります。また、陥没した火口の底に溶岩があるのかどうかも分かりません。1983年から35年間活動を続けてきたプウオオ火口の時代が終わった可能性があります。キラウエア火山に新時代が訪れた気がします。

プウオオ火口

下のチャートは、1955年以降のキラウエア火山東断層での主な噴火のリストです(噴火日数が1日未満、流出した溶岩が少なかったものは省いてあります) プウオオ火口は35年間も噴火を続けてきており、それがどれだけ異例なのかが一目瞭然です。長期に渡る断層噴火によってプウオオ火口から流れ出た溶岩で、キラウエア火山は堆積されて成長してきました。

堆積し標高が高くなったことでプウオオ周辺からは溶岩が出にくくなり、標高の低い断層東端で圧力を抜き始めているのかもしれません。1か所に集中せず、このように断層上で噴火が移動して行くことにより山全体が大きくなります。

日付噴火継続日数流出した溶岩量場所
195502月28日88日87,600,000ケヘナ
196001月13日36日113,200,000カポホ
196109月22日3日2,200,000 
196310月05日1日6,600,000 
196503月05日10日16,800,000 
196810月07日15日6,600,000 
196905月24日867日176,700,000マウナウル
197202月04日455日119,600,000 
197212月12日203日28,700,000 
197709月13日18日32,900,000 
197911月16日1日580,000 
198301月03日12,897日44,000,000,000プウオオ
201805月03日  レイラニ

※5月3日でプウオオ火口の活動が途絶えたと仮定しての日数

レイラニ住宅街で亀裂噴火

プウオオ火口崩落後、断層内の溶岩はプウオオ火口の東に押し出され、地表に亀裂ができました。そして、5月3日に断層の東端部(レイラニ住宅街)で溶岩噴火が始まりました。時には70m近くまで溶岩がガスと共に噴き出て、町の一部が飲み込まれています。5月3日の時点では100mほどの亀裂噴火だったものが、翌日には1kmにも伸びました。

地面に亀裂

レイラニ中心部の亀裂噴火(地面に亀裂)

亀裂噴火が始まる

亀裂噴火が始まったレイラニ住宅街

亀裂から吹きあがる溶岩

亀裂から吹きあがる溶岩

群発地震

レイラニ住宅街で噴火前30日間で722回の地震があったのに対し、噴火2日後からさかのぼって30日間で1355回の地震、3日間で600回の地震があったことになります。

少し気になることがあります。噴火前は断層東寄りの浅い所で群発地震が続いていましたが、噴火後はマグニチュード6.9を含む大きめな地震がハレマウマウのあるキラウエア山頂付近、山頂に近い東断層場、南西断層沿い3カ所に移動して集中していることです。もしかしたら今後、溶岩噴火がレイラニからこれらの地域に移転する可能性も出てきたと思います。一体次はどこで何が起こるのでしょう。

ハワイ島の地震(過去30日間の数:1355回)

※画像にUSGS(アメリカ地質調査所)と記された写真は、特別な許可を持ったヘリコプターにより制限区域内から空撮されたものです。観光ヘリコプターから撮影されたものではありません。

05月10日 火口の崩落と噴煙

ハレマウマウ火口の溶岩湖面がどんどん下がっていくことに関連して“これから起こりえることの一つ”として報告しようと思っていましたが、急速に変化をしているので急遽新しい溶岩情報をお伝えします。

プウオオ火口は陥没してかなり深い穴があき、火口内は空っぽ状態。ハレマウマウ火口の膨張がマックスに達し、4月21日~27日の間、溶岩湖からハレマウマウ火口の底にあふれ出てきました。

しかしその後の急な収縮で、5月2日から4日間で湖面は200メートルも下がりました。平均して湖面は1時間に2メートル下がっていたことになります。ついにウェブカメラからも溶岩の湖面が見えない深さになりました。その溶岩がいまキラウエア火山の東断層(キラウエアの麓付近)のレイラニ付近から溶岩噴火として押し出されている状態です。

ハレマウマウ火口の溶岩湖の変化(湖面が見えなった)

溶岩がなくなってぽっかり空いた深い火口内の壁はこれから何度にも渡って崩れ落ちていきます。そのたびに火口から気味の悪い色の煙(砕屑物、灰、ガスや水蒸気 )が立ちあがります。プウオオ火口では5月4の昼に、ハレマウマウ火口では5月9日の朝に、それぞれ見事な噴煙が上がりました。

プウオオ火口から噴煙

5月4日 12:46

褐色の噴煙を上げるプウオオ火口

ハレマウマウ火口から噴煙

5月9日 8:29

黒い噴煙を上げるハレマウマウ火口

水蒸気噴火の懸念

壁の崩落によって上がる噴煙などは、それほど危険を伴いません。これから心配されるのが、ハレマウマウ火口の溶岩レベル低下が続き、地下水層以下になってしまった時のことです。水と溶岩の温度差により生まれるエネルギーは、破壊力を持ちます。そのため、危険度の高い”マグマ・水蒸気噴火(爆発)” が起こる可能性が出てきました。

マグマ・水蒸気噴火の爆発エネルギーは、直径数メートルの石(重さ数トン)が数キロにわたって吹き飛ばされるほどです。そんな時に国立公園内に人がいたら、人身災害は避けられなくなります。したがって、もしかしたらまた火山国立公園は閉鎖されるかもしれません。

水蒸気噴火が起こるまでの過程

20年ハワイ島に暮らしていて、これだけ色々な変化が続くキラウエアを見るのは初めてです。キラウエア火山が成長していく過程のほんの一部に過ぎない最近の火山活動、この後一体何が起こるのでしょうか?

※画像にUSGS(アメリカ地質調査所)と記された写真は、特別な許可を持ったヘリコプターにより制限区域内から空撮されたものです。観光ヘリコプターから撮影されたものではありません。

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